一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星
栄佐が小紅に微笑みかける。江戸の女たちを失神させるという碧天の魅力的な微笑は今、小紅一人に向けられていた。
「俺にとっちゃア、お前の方がこんなただの石よりよほど大切だ。だが、これは持ち主を災いから守ってくれるというから、今はお前が持っていた方が良い。俺の見たところ、あの難波屋は蛇のように執念深そうなヤツだ。用心するに越したことはない。お前もとんだ男に見込まれちまったもんだな」
栄佐は笑い、小紅の頭をまた撫でた。
「俺にとっちゃア、お前の方がこんなただの石よりよほど大切だ。だが、これは持ち主を災いから守ってくれるというから、今はお前が持っていた方が良い。俺の見たところ、あの難波屋は蛇のように執念深そうなヤツだ。用心するに越したことはない。お前もとんだ男に見込まれちまったもんだな」
栄佐は笑い、小紅の頭をまた撫でた。