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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日

 いちばん幸せな日

 小紅は京屋を出たときから、ずっと物想いに耽っていた。二月も終わりが近くなりつつある。江戸の梅の名所では今が満開で、大勢の梅見客で賑わっているという。
 気随気儘なお嬢さま暮らしの頃は父と連れ立って梅見物にも行ったが、今はその日を暮らしてゆくのがやっとで、花見どころではない。

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