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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日

 縫いながら、こんな贅沢な晴れ着を纏う暮らしを以前の自分は当たり前だと思っていたことに今更ながらに気づいた。贅沢をしたいわけでもないし、戻りたいとも思わないけれど、何も知らない無垢な自分に帰りたいとは思った。
 今日は何と勝手口だけでなく小座敷にまで通され、茶菓まで運ばれてきた。恐縮していると、お彩だけでなく当主の市兵衛まで現れた。

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