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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日

 そういえば、最近、武平の袢纏を着て大好きな叔父の想い出に浸る時間が減りつつある。そのことに気づいていないわけではなかった。
 叔父が急死して、まだやっと一ヶ月、思えば四十九日の法要すら出席しなかった。あれほどの恩を受けているというのに、自分は何という恩知らずだろう。なのに、早々と他の男に心を移してしまった、自分はそんな変わり身の早い尻軽な娘なのか。

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