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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日

 今日もまた信じられないほどの報酬を得て、小紅は京屋を辞した。なのに、心は少しも弾まない。
 この頃、小紅は自分で自分の気持ちが判らなくなっていた。先刻、京屋の内儀に〝好きな方は?〟と問われた時、何故か、真っ先に浮かんだのは武平ではなく、栄佐だったのである。
 私は武平叔父さまが好きなのではなかったの? 小紅は内心、かなり狼狽えた。それとも、武平は既に亡くなった人だから、栄佐を思い出したのか?

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