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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日

「くそぅ」
 準平も負けてはいない。衝撃と恐怖で蒼白になっているが、もう殆ど自棄になったのか。いきなり匕首を振りかざして栄佐に向かってくる。
「栄佐さん、危ないっ」
 小紅が叫ぶのとカァンと小気味の良い音がしたのはほぼ時を同じくしていた。あまりに素早い一瞬の光景は、夢を見ているかのようでもあった。栄佐は突進してきた準平の匕首を刀で見事に跳ね返したのだ。

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