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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日

 だがと、当然の疑念も湧いてくる。何ゆえ、役者である彼が刀を持ち、自在に扱うほどの腕を持つのか。そこから導き出される結論はただ一つ、栄佐がただの町人ではないということ。
 では、栄佐は武士なのだろうか? 茫然としてまだ夢を見ているような気がする。小紅は自分の中で渦巻く幾つもの考えを上手く纏められないまま、ぼんやりとしたまなざしを栄佐に向けた。

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