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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日

 その口ぶりは平坦で何の感情も感じさせなかったけれど、それだけに、余計に何か怖ろしいものを感じさせた。例えるなら、深い沼底に住まう沼の神。沼を守るという神は黒々とした巨大な鯉の形をしているという。
 ひとたび怒れば、その力は凄まじく、沼の水を溢れさせ、溢れ出した水はこの世のすべてを覆い尽くし、すべての生きとし生けるものを根絶やしにする。昔語りで語られる伝説上の話だ。

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