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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日

 小紅がハッとして彼を見つめると、栄佐は前を向いたままで言った。
「いつかお前が着てた袢纏、あれは惚れた男の形見だと言ったな。その惚れてたとかいう男のことはもう、吹っ切れたのか?」
「正直、全部きれいに忘れられたわけではないと思うの。まだ、その男が亡くなって日も浅いし」
「それでも良いのか。お前は俺の気持ちを受け容れられるのか?」

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