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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間

「それで、お前、裏店からここまで走って逃げてきたって!? こいつは良いや、まったく、お前らしいっていうか」
 憎らしいことに、栄佐は涙眼になって笑い転げている。
 何よ、人が大変な目に遭って、病み上がりの身体で余力を振り絞って逃げて来たっていうのに、笑うことなんかないでしょうに。
 小紅は叫んだ。
「笑ってる場合じゃないわよ。そのならず者、何とか途中で振り切ったけど、まだ近くを探してると思うし」

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