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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 先代から長年仕えてきた大番頭は衷心から意見したものの、父はなかなか聞き入れようとはしない。そんな中、番頭の吉三郎(きちさぶろう)が店を辞めたのをきっかけに一人、二人と奉公人が辞めていった。
 その頃からだろうか、上州屋の品物の質が落ちたと囁かれるようになったのは。その頃には、父は昼間から店にも出ずに奥で酒を浴びるように飲むようになっていた。

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