テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 準平はニヤニヤしながら、小紅の行く手を阻むように立ち塞がる。小紅は大きな黒い瞳を瞠った。
「あの頃から器量良しだったが、いっとう綺麗になったじゃねえか」
 労りの言葉どころか、真っ先にかけられたのがこんな科白だったとは。
「それに、色気も出てきたな」
 準平は小紅に近づいてくると、グイと顔を近づけてきた。酒臭い息をまともに吹きかけられ、反吐が出そうだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ