テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 着いた早々だから、まずは部屋で休むと良いよと、いかにも叔父らしい温かな言葉を貰い、小紅は立ち上がった。年嵩の女中に案内されて居室となる部屋へと廊下を歩いていく途中のこと、ふいに物陰から誰かが飛び出してきた。
「小紅は俺が案内するから、お前はもう良い」
 愕く女中に居丈高に命じ、準平は女中を追い払った。
「久しぶりだな」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ