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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

「ふん、相変わらず誇りだけは富士山のように高い高慢な女だな。吉原で客に脚を開くのも、俺とやるのも所詮は同じことだろうに」
 準平がまたしても顔を近づけてきた。細くつり上がった眼はどこか縁日で売っている狐面を思い出して、怖いくらいの迫力がある。
「お前はうちの親父に金で買われたも同然の女なんだ。言ってみれば、俺のための専属の女郎みたいなもんさ。良いか、あのときのように俺から逃げられると思うな。今度ばかりは逃さねぇぞ」

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