一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い
行きがけにお守りやら絵馬やらを売っているところで絵馬を買い求め、願い事を書いてここに来た。祈るだけ祈ると、随分と気分がすっきりとしていることに気づき、こんなことなら、もっと早くに来れば良かったと今更ながらに思う。やはり、人間とは元来、弱い生きものなのだ。
心が弱った時、こうして何かに縋らずにはいられないのがその証拠だろう。自分は今まで神仏頼みなぞには縁のない無信心な人間だと信じていたけれど、所詮は我が身もそんな心弱い人間にすぎなかったということだ。
心が弱った時、こうして何かに縋らずにはいられないのがその証拠だろう。自分は今まで神仏頼みなぞには縁のない無信心な人間だと信じていたけれど、所詮は我が身もそんな心弱い人間にすぎなかったということだ。