テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い

 栄佐にすればたまたま虫の居所が悪かっただけの話なのに、睨みつけられた人足はこの場で栄佐が懐から匕首でも取り出すのではと怯えたらしい。
「兄さん、ここは天下の往来だ。ほんの少し肩が掠ったくれえで、そう怒るなよ」
 一緒にいた連れの長身の男が取りなすように言い、初めて栄佐は我に返った。
「す、済まん。俺もボウっとして歩いていたから、おあいこだ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ