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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬

 嫉妬

 同じ日の夜。小紅は桜団子を持って隣の栄佐を訪ねた。夜といってもまだまだ宵の口で、長屋のそこここには灯りが点っている。母親が利かん気な子どもを叱る声や赤ン坊の泣き声が声高に洩れ聞こえていた。
 皿に載せた桜団子を見てから、小紅は腰高障子を軽く叩いた。
「栄佐さん、いるの?」

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