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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬

 その時、栄佐は薄い夜具を頭からすっぽりと引っ被って寝ていた。ねぐらに帰ってきたのは、かれこれ一刻ばかり前になる。あれから人足二人と深川の縄暖簾に行き、昼日中からさんざん飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをやった。
 男ふたりは多吉と与助といい、ともに三十代後半の日傭取りだった。二人とも気の好い男たちで、栄佐は二人を相手にさんざん愚痴った。

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