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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬

 一方、小紅は首を傾げた。
「留守なのかしら」
 だが、昨日も居留守を使われたことを思えば、今夜も似たような可能性もある。小紅は思い切って腰高を開けた。
「栄佐さん? いるんでしょ」
 小紅はそろそろと三和土から上にあがり、こんもりと盛り上がっている布団に近づいた。
「ほら、やっぱり、いるんだ」
 栄佐がもう寝入っているのかと思い、行灯はつけずに枕許に座って覗き込む。

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