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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬

「小紅さん、何か勘違いしているようですけど、今日、折り入ってお話があるのは仕事のことではないのよ」
 小紅は当てが外れて落胆したのか、ホッとしたのか判らず、惚けたようにお彩を見た。
 お彩の顔に再び笑みが戻った。
「私は回りくどい話は苦手なので、この際、有り体に申し上げますけど、気を悪くなさらないでね。徳太郎―いえ、市兵衛との祝言の話、小紅さんにはまったくその気持ちはないのかしら」

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