テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬

 言いにくいことではあるけれども、この際、曖昧な返答はかえってお互いのためにならない。小紅の意図は正しく伝わったらしく、お彩は頷いた。
「そうね。確かに以前もこの縁談をあなたはきっぱりとお断りになった。あなたに好いた方がいるということだったので、私どももごり押しはできないと思ったのです」
 でも、と、お彩は淡々と続けた。
「徳太郎の話では、あなたはどうもあまりその方と上手くいっていないのではないかということなのですけれど、それはいかが?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ