テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬

 小紅は唇を噛みしめ、うつむいた。
 お彩が優しい声音になった。
「息子があなたに夢中になってしまったばかりに見当違いなことを言っているのだとしたら、ごめんなさいね。でも、今のあなたを見ていても、正直、あまり幸せそうには見えないわ。普通、恋をしている娘盛りの女というものは、もっと嬉しげに笑っているものですよ。なのに、今日のあなたときたら、まるでこれからお通夜に出席するような暗い顔をしています。私も息子の読みが満更、当たらずとも遠からずだと思うのですけど」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ