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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬

 市兵衛がつと振り向き、小紅を見据えた。
「今日も小紅さんはまた泣いていた。もしかたら、お袋が泣かせてしまったのかもしれないけど、私にはどうもそれだけでお前が泣いているようには見えない。また、あの男がお前を泣かせてるんじゃねえかと思うと、私は腹が立って仕方ないんだよ。何で、こんな良い娘を泣かせてばかりいるのか、私には判らない」
 穏やかな彼には似合わない鋭い語気で言い放った。

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