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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬

「私なら、お前さんを泣かせたりしない」
 いきなり強い力で抱きしめられ、小紅は動転した。
「市兵衛さん」
 だが、ずっと小紅への思慕を抑えていた市兵衛も止まらない。むしろ小紅が抗えば抗うほど背に回った腕に力がこもり、拘束は強くなった。
「好きだ、小紅」
 後頭部に手を回され、強引に顎を持ち上げられた。市兵衛の整った顔が急接近してくる。

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