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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬

 口づけはほんの掠める程度のものにすぎなかった。しかし、しんとした唇の感触は栄佐の熱を持った燃えるような濃厚な接吻とはまったく違っていた。
 立て続けに二人の信頼していた男に強引に迫られた―その衝撃は小紅自身の許容力の限界をはるかに越えていた。
「いやぁ、いやっ」
 小紅は最早、悲鳴とも呼べない金切り声を上げ、怯え切って暴れた。

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