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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

 翌日―ついに運命の日が訪れた。それは栄佐にとってだけではなく、小紅にとっても同様である。
 その朝、小紅は人知れず長屋を出た。町人町(ちょうにんまち)の京屋までの道程(みちのり)をゆっくりと歩いた。江戸の町外れに和泉橋という小さな橋がある。小さな朱塗りの橋がこれまた名も知れぬささやかな川面に掛かっている。

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