一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐
正直、女が生活のためとはいえ身をひさぐ場所である岡場所には行ってみたいとは思わない。しかし、仕事を得るためなら、それも仕方ない。もちろん、小紅の探している仕事は岡場所で身体を売る女郎の仕事ではなく、岡場所で働く女たちの着物を仕立てさせて貰うお針子としての仕事である。
思案に耽りつつ歩いている中に、さしもの長い道中も終わり京屋が見えてきた。いつものように勝手口から訪いを告げると、既に顔なじみになった若い女中が案内して客用の小座敷に通された。
思案に耽りつつ歩いている中に、さしもの長い道中も終わり京屋が見えてきた。いつものように勝手口から訪いを告げると、既に顔なじみになった若い女中が案内して客用の小座敷に通された。