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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

 待つ間もなく市兵衛と次いでお彩が現れた。二人が席に着くと、先刻の女中がしずしずと茶菓を運んできて、それぞれ三人の前に置いた。
「お忙しい中、お時間を頂き申し訳ございません」
 常にも増して丁重な挨拶に、お彩は何か感じ取ったようである。何か言いかけたお彩をを市兵衛が制した。
「おっかさん。申し訳ありませんが、ここからは私と小紅さんの二人で話をさせて頂けませんか」

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