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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

―彼はあなたをどうしようもないくらい―己れを見失うほどに愛しているのだと思いますよ。
 市兵衛の先刻の言葉を思い出した。
 様々な想いが胸の内を駆け巡り、言葉にならない。小紅はその想いの一つ一つを丁寧に掬い上げながら、適当な言葉を探して当てはめていくことに意識を集中させた。
「私も栄佐さんを好きよ」
 そのひと言に栄佐がガバと顔を上げた。
「本当なのか!?」

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