一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐
小紅はこれには無言で頷いた。栄佐が途端に勢い込む。
「なら、所帯を持とう、俺の女房になってくれ、小紅」
小紅は膝の前で組んだ手のひらを無意識の中にすり合わせた。その仕種に栄佐が一瞬、不安そうに眼をまたたかせる。
小紅はありったけの勇気をかき集めた。
「今は、まだ。今はまだ所帯を持つのは無理だと思うの。あんなことがあったばかりだし、栄佐さんのお嫁さんになって夫婦としてやってゆくのは早すぎるんじゃないかしら」
「なら、所帯を持とう、俺の女房になってくれ、小紅」
小紅は膝の前で組んだ手のひらを無意識の中にすり合わせた。その仕種に栄佐が一瞬、不安そうに眼をまたたかせる。
小紅はありったけの勇気をかき集めた。
「今は、まだ。今はまだ所帯を持つのは無理だと思うの。あんなことがあったばかりだし、栄佐さんのお嫁さんになって夫婦としてやってゆくのは早すぎるんじゃないかしら」