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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

「そうだな、考えてみりゃア、俺たちはまだお互いのことを何も知らねえも同然だものな」
 いずれ自分の本当の素性を話すときが来るだろうか、この時、栄佐の脳裏を掠めた想いを小紅はまだ知らなかった。願わくば、話すときなど来なければ良いと栄佐は小紅の涙を見ながらつくづく思った。
 一方、小紅は栄佐が気長に待つと言ってくれたことに安堵し、泣けてしまうほど嬉しかった。そこで彼女はハッと我に返った。

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