テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 小紅の食事はとうに終わっている。お琴が慌てて箱膳を持ち立ち上がったその時、急ぎすぎたせいか、襟許からひらりと何かかが舞い落ちた。本人は気づいていないらしく、慌てて部屋を出ようとするのに、小紅は背後から声をかけた。
「お琴さん、何か落ちたみたいだけど」
 お琴がくるりと振り向き、小紅の拾い上げたそれを見て、見る間に赤面した。
「まあ、何てことでしょう」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ