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一度だけ抱いて～花は蝶に誘われてひらく～

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ～小紅と碧天～】　心の嵐

「もちろんよ。あなたが鍼医であろうと、役者であろうと、私にはそんなこと関係ないもの。あなたはあなただから。私は何もかもをひっくるめてのあなたを好きになったの。だから、何があっても、あなたを嫌いになれなかったんだと思う」
　小紅はこのときだけは年上の女のようにゆったりとした優しい笑みを浮かべた。
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