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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第11章 第一部第三話【月戀桜~つきこいざくら~】 疑惑

 小紅は微笑んだ。
「京都から江戸といえば、随分な長旅です。さぞやお疲れでしょう。粗末な長屋住まいですが、お上がりになって、しばしお休みになって下さい」
 それは小紅の心からの言葉であったが、武士は最後まで固辞した。長屋の近くまで来たところで、男は小さく頭を下げた。小紅も深々と頭を下げる。

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