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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 自分はつくづく幸せ者だと小紅は思う。父は多額の借金を作り、情人と夜逃げして、娘である自分を棄てた。しかし、叔父がその借金をすべて肩代わりして、こうして難波屋でお嬢さま暮らしができる。更にお琴のように忠実で頼りになる女中とめぐり逢えた。
 棄てる神もあれば拾う神もいる。その諺が満更、外れてはいないことを身に滲みて感じている今日この頃であった。

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