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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第12章 第一部第三話【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月

「大きな声を出すな。耳に響く」
「こんな時間まで寝てなきゃならないようなことしてるの?」
 いきなり踏み込みすぎの感がないでもないけれど、言葉を弄している中にまたお互い感情的にならないとも限らない。
「別に、何も」
 とりつく島もないほどの冷淡な言い草に、小紅はついカッとなった。
「昨日、どこに行っていたの?」
「昨日?」
 栄佐が虚ろな視線を宙に投げている。

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