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ソウル・雨─AtoZ.

第6章 雨を聴きながら…

 「…チャンミン。…仕事の話だったら─」「…仕事─?」クックッとチャンミンが声を上げ、笑う─。「…じゃあ、何?─」ユノの声に被せるように「誤魔化すの、上手いね」また、ユノは黙り込んでしまう…今度は不機嫌そうに─。「あの時。ふたりだけだった」冷たい沈黙に構わず、チャンミンは云う─。「僕ユノ以外、全部怖かった、他人が─」…その言葉に頷くかのような、雨音が、窓のほうから聴こえる。「外に出るのも、怖かったし…部屋に一人でも不安だった」─フッと吐息めく、微笑いが形の整った唇から洩れる。
 「あの頃にもう一度、─戻りたいな…」…それきり、チャンミンも、黙ってしまう。暗い寝室の天井に、時折、赤に近い、紫の光が走る。稲妻は短く輝くと、すぐさま闇に消える。…─「どう生きても、いちど切りだって」響きのある声だった。「僕が辞めたいって、戻りたくないって。復帰しても失敗したらユノも、終わりだよ…そしたら─そう云った…」唇を、ユノは軽く噛む。「今初めて云うけどね、…僕、活動再開─失敗したら良い、…って思ってた」「…どうして…今更─」戸惑いより、驚きの色が強くあった。「ユノ…それも、─忘れたの?」陽気さが口調に微かに、混じっていた。

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