ソウル・雨─AtoZ.
第8章 雨の夜の彼方へ─
肩に、熱い舌と…歯。─噛まれる。
痛い─より、小さな衝撃のように思えた。同時に、腰に、熱い息を吐く、いのちを感じる。
…チャンミンの胸に小刻みに震える、掌が触れ、ゆっくりと這いずる動きで、撫で回しはじめた。チャンミンの口から、何かを諦めたような…それでも、甘い息が小さく、零れた。
躰の全てが熱い生き物が、背にぴったり張りついて、時折荒いため息を吐くだけで微動だにしない。
その…ユノの灼けつくような熱い体が、快い。
─不意に、安堵にも似た、吐息が唇を衝いて、出た。
名残を惜しむかのように、胸に何度も触れて来る手をそっと取り、唇に持って行った。
(ユノを愛したことは一度もない)─瞳は冷たい青い窓硝子の向こうを見据えながら、ユノの指のひとつひとつを唇の間に挟み込む。
─チャンミンの瞳の表面を、蛍光色の蒼ざめた光が走った。 ソウルの街すべては、冷たい雨に光っている。
背中の熱した体が、新たに律動をはじめた。 先ほどの紅い液体の強い香いが、寝室を満たしている。
─何処か遠く、薄いガラスでも壊れる音。突然の夜更けの風の仕業だろうか。……ドクドクと脈打つユノの手首の血管─。
痛い─より、小さな衝撃のように思えた。同時に、腰に、熱い息を吐く、いのちを感じる。
…チャンミンの胸に小刻みに震える、掌が触れ、ゆっくりと這いずる動きで、撫で回しはじめた。チャンミンの口から、何かを諦めたような…それでも、甘い息が小さく、零れた。
躰の全てが熱い生き物が、背にぴったり張りついて、時折荒いため息を吐くだけで微動だにしない。
その…ユノの灼けつくような熱い体が、快い。
─不意に、安堵にも似た、吐息が唇を衝いて、出た。
名残を惜しむかのように、胸に何度も触れて来る手をそっと取り、唇に持って行った。
(ユノを愛したことは一度もない)─瞳は冷たい青い窓硝子の向こうを見据えながら、ユノの指のひとつひとつを唇の間に挟み込む。
─チャンミンの瞳の表面を、蛍光色の蒼ざめた光が走った。 ソウルの街すべては、冷たい雨に光っている。
背中の熱した体が、新たに律動をはじめた。 先ほどの紅い液体の強い香いが、寝室を満たしている。
─何処か遠く、薄いガラスでも壊れる音。突然の夜更けの風の仕業だろうか。……ドクドクと脈打つユノの手首の血管─。