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ソウル・雨─AtoZ.

第8章 雨の夜の彼方へ─

 「可愛い…」呟き、何か云いたげな唇を、ソッと、自分の唇で軽く触れた。
 「ユノが…こんなに可愛いなんて─知らなかった」
 小さな顔を両腕の中で、見つめ、また呟く。
 …閉じられた瞳、少し開いた口元。外灯りのせいか、蒼くみえる頬。
 外国の金髪の少女の古い肖像画を思わす貌だった。
 白く光沢ある、皮膚は滑らかで冷たい陶器に触れた感触がある。
 ユノは体を反され、チャンミンの躰の下になっても口から僅かに喘ぐ息を洩らしただけで、チャンミンにされるままになっている。
 ─熱い体を合わせる。
 互いの体温が火傷しそうなヒリつく熱になって、ふたりを火の蜃気楼がつつみ込んだ─。
 チャンミンもユノも何も云わない。
チャンミンは黙ったまま、躰の下にあるユノを見下ろしていた。
 (明日なんて…来なければ、良い─)窓を見たくない。─夜明けの色を見たくなかった。(ユノ)…微かなチャンミンの皮膚の滑る動きに、刺激され、閉じた瞳に眉がひそめられる。
(綺麗だ…ユノ─)シーツの上に、こぼれ落ちた髪に、顔を埋めて柔らかく接吻する。
 ユノの髪にそのまま顔を埋めていた。爽やかな海風に似た、髪の匂い。
 (─僕は何を憎んでる…?)

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