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『好き』の重さ

第12章 運命(さだめ)

「赤ワインをいただけますか?」


赤ワインには芝田さんとの思い出が詰まっている


ふたりでボトルを空けて、楽しい時を過ごしたあの夜…


はしゃぎ過ぎた時間が甦る


あの時の赤ワインよりも強い渋味に少し眉をひそめ、私はワイングラスを振って空気を含ませた


グラスの中で渦を巻くように揺れる深紅のワインは、痛む心から流れ出た血のようで…
渋味が薄れていく反面、切なさが増していった――


不意に涙が溢れそうになり、広くもない立食パーティー会場の隅に並んだ椅子に腰を下ろした


幸せそうな芝田さんの家庭の様子を聞くのは耐えられそうもなかった



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