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恋してキスして抱きしめて

第9章 あの、立場逆転してませんか?

「…………!」



化粧ブロックが積まれた塀の先に、これまた大きなガレージ。


シャッターが上がった外車の前に、千夏がちょこんと立っていた。



「……ユーリさ……」

「あーいいよ、ちょっと待ってて」



俺を見つけると駆け寄ってきそうだったので、足を速めてガレージの前まで急ぐ。


照明が点いてなかったから、傍に寄るまでその表情に気付かなかった。


………大きな目を潤ませて


子猫みたいにプルプル震えてる。



「……はは、ちーちゃん。
なんで泣きそうな顔してんの」

「…………っ」

「頭かわい~」



柔らかい髪を頭の上でひとつにまとめて、パーカーにデニムといったラフな格好。


それだけなのに、なんか愛しい……って俺もう重症じゃね?



「わ、わざわざ家まで……本当にごめんなさい」

「近かったし全然平気」

「でも……」

「俺のマンション、もっと下るけどこの路線上にあるから。
気にしないでいいよ」



って言っても、この時間ならタクシーだけど。


明日も休みだしどうにでもなるって言ってるのに、千夏は申し訳なさそうに俺を見上げる。

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