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恋してキスして抱きしめて

第18章 心からの祈り

………救急車に朱莉と一緒に乗り込んだ時には


辺りは黒い雲で覆われて、大粒の雨が降ってきていた。


朱莉は意識があって、医師の問いにもしっかり答えていて


それでも、俺の両手はガタガタと震えたままだった。




「……情けねぇな……」




………どんな姿を見ても


あの瞳にどれだけの涙が浮かんでいたとしても


“ 単なる過去の男 ” でいられるはずだった。




俺のマンションに来た理由も


焦げたアスファルトの上で、平然と笑っているように “ 演技 ” をしていることも


敢えて聞かずに、突き放す言葉を浴びせれば………




「…………っ」




“ どんなに冷たい男を演じても

無理だよ、おまえには ”


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