恋してキスして抱きしめて
第18章 心からの祈り
「………病院に運ばれたのは今日が初めてですが
妻は普段から、放浪癖があるんです」
「…………!!」
旦那は虚ろな目をして
さっきまでの明るさを消して話し始めた。
「私は、診療所で薬剤師をしていましてね。
仕事をしている間は、私の母親が妻を見ているんですが
少し目を離してしまうと、何も持たずに、何も履かずに外に出てしまうんです」
「…………」
「意識もあるし会話も成り立つので、1人で出歩いても問題は無いんですけどね。
最近は特に、多くなってしまって………」
………ちょっと、待て。
さっきから何言ってんだ?
放浪癖って……
「……あぁ、すみません」
放心する俺に気付いて、旦那は顔を上げた。
「大学時代の妻を知っているあなたには、信じられないかもしれませんね。
……出来るなら、私もその頃の “ 本来の朱莉 ” と出逢いたかった」