恋してキスして抱きしめて
第18章 心からの祈り
「…………っ」
項垂れた体が、僅かに震えている。
俺はその前に立ち尽くしたまま
何の声も発することができない。
「……人の命に関わり、救う仕事をしている立場としても
朱莉の一生涯の旦那としても
絶対に言ってはいけない言葉だった」
「…………」
「何度も謝ったが、朱莉は微笑むだけで
それからしばらくして、“ 1人になりたい ” と言いだしてね。
その手に、ある施設のパンフレットを持っていた。
………アルツハイマー患者や、依存病、……心のケアを必要とする者たちが集まる場所だ」
旦那の声は、どんどんか細くなっていく。
「北陸の、海の近くの施設で
……治療というよりは
保護を目的にしていると言ったほうが正しいかもしれない」