恋してキスして抱きしめて
第18章 心からの祈り
「………え?」
「……相手の目を見て、感情を読みとるんです」
“ 今日は何だか嬉しそうね ”
“ どうしたの?元気無い? ”
……大学の時も、社会人になってからも
朱莉はいつも俺の目を覗き込んで、じっと見つめる癖があった。
相手が何を考えてるか、自分がどう思われているかを
人よりも敏感に感じ取ってしまう朱莉は
繊細な心に、自分で大きな負荷をかけてしまう。
俺に別れを告げた時も
きっと………
「君は、一体……」
「だから俺も同じで
サインを見逃さないように、人の目をよく見るようになりました」
職業柄、多くの人間と接し
昔から多くの友人がいる俺は
激務に追われ、志を奪われていく同僚達や
人生を重ねていく過程で、様々な悩みを抱える仲間達の
今にも消えてしまいそうな、灯火のような目を
数え切れない程、見てきたんだ。