恋してキスして抱きしめて
第20章 ただ、想うだけで
………室内全体を明るくする、天井の照明は消されていて
カウンター式の対面キッチンの前に置かれた、フロアランプだけが点けられている。
薄暗いリビングの中央にある、革張りのL型ソファに腰かけて
その人はウイスキーのキャップを外して、グラスに注いでいた。
「………なんで、いるの?」
自分でもびっくりするくらい、低くて冷たい声だったと思う。
だけど
「……ひでぇな。
実家に帰ってきたんだよ。
悪いか?」
日焼けした肌
話しかけるのを躊躇してしまいそうな、ラインの入った坊主頭に、鋭い目
黒のタンクトップから伸びた腕は、細くてもしっかりと筋肉がついている
………全てがあたしと正反対のお兄ちゃんは
ボトルをローテーブルの上に置くと、にっこり笑った。