恋してキスして抱きしめて
第22章 青春フルスロットル
「もぉ~~蓮せんせい、さっきから意味ぷーだよ!
何のことを言ってるの~~?」
ユーリさんの名前を聞き逃したのか、陽菜ちゃんは腕を組んでプリプリと怒っている。
とはいえあたしも、 “ 黒髪の蓮 ” が、陽菜ちゃんの先生だったってことは分かったけど
深い瞳の奥で、彼が何を見据えているのかは知ることができない。
「ってゆーか、その前に素朴な疑問なんですけど。
どうしてスーツなんですか?」
超絶似合うしカッコイイけど~と、陽菜ちゃんが付け加えたように
周りの視線を一気に集めてしまうほど
高そうなジャケットを羽織った彼の姿は、本当に素敵すぎだ。
「普通に今日は出勤だったんだよ。
しかも初っ端、商談に入った瞬間に携帯が鳴って」
彼は苦笑して、続ける。
「先方に『宜しくお願いします』って自ら始めた1分後に
『すみません急用ですサヨ~ナラ~』って言い捨てて退席」
「…………!?」
「この会社に勤めて初の、仕事放棄。
早退した僕は、全速力で走って参りました」