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恋してキスして抱きしめて

第6章 恋愛ビギナー

「百戦錬磨のユーリも、変なところ鈍感だな」

「え?」

「それとも、気付かないふりか?」



俺の前の席で、先輩がやれやれと溜息を漏らす。


いやいや、ここはバカな男でいさせてくださいよ。


彼氏持ち&仕事のパートナーの気まぐれに、乗ってやるほど寛大じゃありませんって。


俺は何も言わずにニッコリ笑うと、イスから立ち上がった。



「まぁ、でも確かに昨日今日って、お前イイ顔してるよ」

「そうですか~?」

「明日からの連休が楽しみとか?」



………楽しみ、か。


まぁ、週末はいつも通り、適当に女と過ごすだろうと思ってた俺にとっては


記念すべき第1回目の任務を前に、どこかでそういった感情があるのかもしれない。



「デートというよりは、保育というか子守というか」

「保育?子守?」

「だって、俺が中学の時には、まだピカピカの小学1年生だったってことですよ?」



全く意味が分からないといった先輩を置いて


俺はタイムカードを切ってフロアを後にした。

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