ずっと君を愛してる
第11章 現実へ
翌朝は仕事納めだというのに雨だった。かといって、仕事納めにふさわしい天気が何かと聞かれても、困る。
午前中に雑用だけ済ませ、挨拶をして帰る準備をした。挨拶といっても小さな出版社だから、すぐに終わった。
会社のあるビルを出ると、みゆきがいた。ダウンのロングコートにブーツを履いてしっかり防寒しているのに鼻の頭が赤い。
「…みゆき?」
「あ!久し振り」
「どうしたの?約束は夜じゃなかった?」
「うん。近くまで来たから」
「とりあえず、店に入ろう。寒いから」
ぼくはみゆきの腕をとり、向かいのカフェに入った。
カフェオレを一口飲んで、みゆきは落ち着いたのか深呼吸して笑った。
「瀬川くん、携帯持ってないんだもん」
「そうだね。あ、でも一応あるんだ。会社で使ってるのが」
「でもそれにかけるわけにはいかないでしょ?」
「そうだね…」
「瀬川くん…少しやせた?」
そう言ってみゆきはぼくを覗きこむ。
「少しね。仕事忙しかったからかな。みゆきは変わらないね。相変わらずきれいだ」
「そういうこと…言うんだ」
「え?」
「ううん。あ、ちょっとお手洗い」
みゆきが席を外しているあいだ、ぼくは
カフェから通りをながめた。相変わらず雨は降り続いている。…冬の雨はさみしい。からからに乾いた葉も空気も全部流されて鈍色に包まれる。こんな日に写真を撮るとしたら…赤い傘だけを色にして、あとはモノクロかな。絞りは開放のスローシャッターで…静流なら、人物を入れるだろうな。どんな表情?やっぱり笑顔かな。
「…くん?瀬川くん?」
「え…?あ、おかえり」
「どうかした?」
「いや、写真のこと考えてた」
「瀬川くん、変わったね」
「そうかな?そんなことないよ」
「大人になった感じ」
「これからどうする?ぼくは一旦帰ってから夕方出てくるけど」
ニューヨークから帰って荷物はそのままだし、フィルムの整理もしておきたかった。帰ろうか、と言ってぼくはコートと伝票をつかんで立ち上がった。支払いを済ませて店を出ようとしたとき、みゆきがぼくの腕をつかんだ。
「私も行く!」
午前中に雑用だけ済ませ、挨拶をして帰る準備をした。挨拶といっても小さな出版社だから、すぐに終わった。
会社のあるビルを出ると、みゆきがいた。ダウンのロングコートにブーツを履いてしっかり防寒しているのに鼻の頭が赤い。
「…みゆき?」
「あ!久し振り」
「どうしたの?約束は夜じゃなかった?」
「うん。近くまで来たから」
「とりあえず、店に入ろう。寒いから」
ぼくはみゆきの腕をとり、向かいのカフェに入った。
カフェオレを一口飲んで、みゆきは落ち着いたのか深呼吸して笑った。
「瀬川くん、携帯持ってないんだもん」
「そうだね。あ、でも一応あるんだ。会社で使ってるのが」
「でもそれにかけるわけにはいかないでしょ?」
「そうだね…」
「瀬川くん…少しやせた?」
そう言ってみゆきはぼくを覗きこむ。
「少しね。仕事忙しかったからかな。みゆきは変わらないね。相変わらずきれいだ」
「そういうこと…言うんだ」
「え?」
「ううん。あ、ちょっとお手洗い」
みゆきが席を外しているあいだ、ぼくは
カフェから通りをながめた。相変わらず雨は降り続いている。…冬の雨はさみしい。からからに乾いた葉も空気も全部流されて鈍色に包まれる。こんな日に写真を撮るとしたら…赤い傘だけを色にして、あとはモノクロかな。絞りは開放のスローシャッターで…静流なら、人物を入れるだろうな。どんな表情?やっぱり笑顔かな。
「…くん?瀬川くん?」
「え…?あ、おかえり」
「どうかした?」
「いや、写真のこと考えてた」
「瀬川くん、変わったね」
「そうかな?そんなことないよ」
「大人になった感じ」
「これからどうする?ぼくは一旦帰ってから夕方出てくるけど」
ニューヨークから帰って荷物はそのままだし、フィルムの整理もしておきたかった。帰ろうか、と言ってぼくはコートと伝票をつかんで立ち上がった。支払いを済ませて店を出ようとしたとき、みゆきがぼくの腕をつかんだ。
「私も行く!」