ずっと君を愛してる
第11章 現実へ
みゆきにしては大きな声で言った。
「いいけど…散らかってるよ?」
「いいのいいの!」
「じゃあ…行こうか」
「瀬川くんのうち、初めて」
「そうだっけ?」
「うん、そう」
雨が小降りになったのでぼくらは歩いた。駅から距離のある、少し不便な場所。
「マンションじゃなかったんだ」
「うん。一軒家。小さいけどね。家賃は案外安いんだ」
「ここ…静流は来たことある?」
「あるよ…何度か」
なぜか、一緒に暮らしたことがあるとは言えなかった。
「このうち、瀬川くんぽい」
「ぼく…っぽい?どういう意味?」
「安心できるっていうか、くつろげるっていうか…」
「何か飲む?あ、さっきも飲んだよね。もうちょっと後にしよっか」
「うん…ありがとう…これ、静流?」
壁に貼った写真の中から、みゆきは一枚きりの静流の写真を見つけて言った。それは静流が朝食の準備をしているところを斜め後ろから撮ったものだった。
フライパンでホットケーキをひっくり返すからその瞬間を撮ってほしいと、何回も二人で頑張った時だ。
あの時、ぼくらは死ぬ程笑った。あの時だけじゃない。静流がこの家にいた間、ぼくらはずっと笑っていた。笑いすぎて顔の筋肉が痛かったくらいだ。
もう、一生分笑ったかもしれない。
「…静流、元気かな。ニューヨークにいるんだよね」
みゆきはひとりごとのように言った。
元気だったよ、びっくりするくらい大人になって、仕事も見つけて自分の力で生きてたよ…そうとは言えずにぼくは答えた。
「便りがないのは何とかって言うしね…」
「瀬川くん、おじさんぽい」
「え?そうかな」
「ぽいぽい!」
その時、みゆきが旅行鞄につけっぱなしだったタグを見つけたことにぼくは気づかなかった。
「いいけど…散らかってるよ?」
「いいのいいの!」
「じゃあ…行こうか」
「瀬川くんのうち、初めて」
「そうだっけ?」
「うん、そう」
雨が小降りになったのでぼくらは歩いた。駅から距離のある、少し不便な場所。
「マンションじゃなかったんだ」
「うん。一軒家。小さいけどね。家賃は案外安いんだ」
「ここ…静流は来たことある?」
「あるよ…何度か」
なぜか、一緒に暮らしたことがあるとは言えなかった。
「このうち、瀬川くんぽい」
「ぼく…っぽい?どういう意味?」
「安心できるっていうか、くつろげるっていうか…」
「何か飲む?あ、さっきも飲んだよね。もうちょっと後にしよっか」
「うん…ありがとう…これ、静流?」
壁に貼った写真の中から、みゆきは一枚きりの静流の写真を見つけて言った。それは静流が朝食の準備をしているところを斜め後ろから撮ったものだった。
フライパンでホットケーキをひっくり返すからその瞬間を撮ってほしいと、何回も二人で頑張った時だ。
あの時、ぼくらは死ぬ程笑った。あの時だけじゃない。静流がこの家にいた間、ぼくらはずっと笑っていた。笑いすぎて顔の筋肉が痛かったくらいだ。
もう、一生分笑ったかもしれない。
「…静流、元気かな。ニューヨークにいるんだよね」
みゆきはひとりごとのように言った。
元気だったよ、びっくりするくらい大人になって、仕事も見つけて自分の力で生きてたよ…そうとは言えずにぼくは答えた。
「便りがないのは何とかって言うしね…」
「瀬川くん、おじさんぽい」
「え?そうかな」
「ぽいぽい!」
その時、みゆきが旅行鞄につけっぱなしだったタグを見つけたことにぼくは気づかなかった。